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円「過小評価」発言、米国の介入確約ではない
概要:米財務省は円の長期的な下落を大幅な過小評価と問題視しているが、特定水準への誘導や米国のドル売り・円買い介入を約束したものではない。

米財務省は円の長期的な下落を「大幅な過小評価」と公式に問題視している。ただし、「円は過小評価されている」との発言報道を、特定のドル円水準を目指す宣言や、米国によるドル売り・円買い介入の確約と読むことはできない。
2026年7月31日、スコット・ベッセント米財務長官が円について「過小評価されている」との認識を示したと報じた。今回確認できた米財務省の公式資料には、この発言の公式記録、目標レート、米国による介入の確約は示されていない。
公式報告書も「大幅な過小評価」
発言の実質的な内容は、米財務省が7月23日に公表した半期為替報告書と整合する。
報告書は、2011年末から2026年4月末までに、円が実質実効ベースと対ドルでともに51%下落したと説明。この長期的な下落が「大幅な円の過小評価」をもたらしたと評価した。
ここで数字の読み方には注意が必要だ。51%は「円が適正価値より51%安い」という推計ではない。米財務省が示したのは、物価差を調整した実質実効相場と対ドル相場について、特定期間の始点と終点を比べた下落率だ。報告書は適正なドル円レートを提示していない。
監視対象でも「為替操作国」ではない
米財務省は日本を、為替政策やマクロ経済政策を注意深く見る「監視対象リスト」に残した。一方、2025年12月までの4四半期を正式な対象期間とする今回の審査では、日本を含む主要貿易相手国のいずれも為替操作に該当しないと結論付けた。
「円は過小評価されている」との評価と、「日本が円安誘導のため為替を操作した」との認定は別の話だ。前者は通貨価値と経済の基礎的条件のずれに関する評価であり、後者は法律上の基準に基づく政策行動の判定である。
報告書は、日米金利差が縮小しても円安が続いたと指摘した。金融市場の変動や原油価格などの世界的要因も円に影響した可能性があるとしており、足元の円安を単一の原因で説明してはいない。
日本側も水準への言及は避ける
片山さつき財務相は7月24日の公式会見で、過度な為替変動は望ましくないとの認識を米国と共有していると説明した。その一方で、具体的な為替水準へのコメントは控えた。
この区別は重要だ。「過小評価」は中長期の価値判断、「過度な変動」は相場の速度や秩序に関する判断であり、どちらも直ちに介入の実施を意味しない。
ベッセント氏自身も2026年1月、CNBCの番組で米国が円高誘導のため為替介入をしているかと問われ、これを否定したうえで強いドル政策を強調した。この過去の発言は7月31日の発言内容を直接裏付けるものではないが、通貨価値への評価と介入の実施が別の判断であることを示している。
市場で区別が必要な3つの論点
区別が必要なのは、通貨の評価、口先によるけん制、実際の市場介入の3つだ。
通貨が過小評価されているとの判断だけでは、介入実施の有無や時期は決まらない。米財務省報告書も、日米金利差の縮小だけでは円相場を説明せず、金融市場の変動や原油価格が影響した可能性を挙げている。実際の介入は、当局が市場で通貨を売買する別の政策行動である。
したがって今回、最も堅く確認できる結論は、米財務省が円の長期的な下落と過小評価を公式に問題視し、ベッセント氏も同趣旨の認識を示したと報じられたことだ。「米国が特定水準まで円高を誘導する」「日米協調介入が決まった」とまでは言えない。
今後は、米財務省と日本の財務省による公式発表、介入実績の公表、日本銀行の金融政策判断を別々に確認する必要がある。高官発言だけでは、短期の相場方向や政策行動は確定できない。
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